40代から考えたいセカンドライフのこと
更新日:2020年11月11日
60歳という人生の節目を意識せざるを得なくなる年齢を迎えると、誰しも第二の人生をどう組み立てていくのかを考えずにはいられません。
今回はコモンフルールで生活をはじめるであろう、カトレア世代のシングル女性を想定し、ファイナンシャルプランナーの辻本由香さんにお話をお聞きしました。
※カトレアの花言葉は「成熟した大人の魅力」。まだまだシニアや高齢者とは呼びたくはないアクティブなシングル女性の総称として、私たちはカトレア世代と呼んでいます。
辻本さんは、お子さんのいらっしゃらないご夫婦やシングルの女性、がんなどの病気を抱えている方や医療関係者を中心にご相談にのってらっしゃるとお聞きしました。
(辻本)
はい、本格的にファイナンシャルプランナーの仕事を始めるきっかけなったのは、私が43歳のときにがんを発病したことでした。
同室に入院している方の中には、保険に入っておらず、専業主婦なので治療費の負担を減らすために退院してすぐにパートを始める方もいました。
知識を持っていなかったというだけで、お金の準備ができず苦労する姿を知り、私の知識を役に立てたいと思い「FPが語るがんとお金の話」というセミナーを始めました。
セミナーの回数を重ねるうちに、個別相談をお願いされる機会が増え、責任ある仕事をするために独立しました。
独立された当初はがん患者さんのご相談が多かったのですか。
(辻本)
はい、そうですね。
例えば、がんを発症したことで子どもを授かることができなくなったご夫婦のご相談では、私自身も同じ立場となってしまいましたから、本音で話を聞いてくれるという思いが強かったのかなと思います。
私もいちがん患者であったということもあり、患者さんをはじめ、医療機関からもお仕事の依頼があります。
シングルの女性を対象にされるようになったきっかけは?
(辻本)
子どもができない人へのサポートをするなかで、シングルの女性へのサポートも自然に求められるようになってきました。
年齢を重ねたシングル女子の悩みとは
コモンフルールは60歳以上のシングルの女性で、元気に暮らしながら新な生き方にチャレンジしたいという方3人と今後日本の介護の現場を支えることになる外国人介護士の女性6人がともに暮らすシェアハウスです。
人生100年の時代と言われる昨今、シングルの女性はどんなことでご相談に来られますか?
(辻本)
相談に来られる時点で、ある程度自分でリタイア後の計画を立てておられる方が多いです。
自分の計画に抜け落ちはないのかとか、もっと貯金をしないといけないのかなど、プロに見てもらいたいという方がほとんどです。
ただ、一般的にも定年後の生活を具体的にイメージしている方は少ないと思います。
企業に勤務していて定年が決まっている場合、先を必要以上に心配して萎縮してしまう方も多いですし、逆に自営業やフリーランスで仕事をしている方は、収入は半分になるかもしれないが、なんとかなると思っている人が多い傾向がみられますね。
定年後をイメージできていないということですが、何歳ぐらいの方が相談に来られますか。
(辻本)
若い方だと、30代、40代の方も結構いらっしゃいます。
定年後のイメージの持ち方にも、世代ごとの傾向があるように思います。60歳すぎた方は退職金もある程度の金額があって恵まれていて、意外に鷹揚なのかなと。
例えば、退職金で家を買いたいという相談でアポを取られていたのですが、来られたときには実は1週間前に購入してしまったので、今後やっていけるでしょうかという相談に変わった方もいます。
40代、50代の方は中間管理職世代でしんどい思いをしている人が多いですよね。なかには、会社も辞め、家も変えて新しい人生を歩みだしたいという方もいます。
そんな方に、どんな仕事ができそうですか、何ができますかと、突き詰めると「派遣でもいい」と。そこで一般事務の派遣の時給なら約1200円で、7時間働いても1万円に満たず、1ヶ月働いても20万円。そこから交通費を支払う。契約は3ヶ月ごと、更新されなくて退職金はない。というような現実をお話しすると「いまの仕事を頑張ります」とおっしゃいます。
30代の初め方はとても慎重です。すごく緻密で、路線をきっちり決めておきたい。失敗は絶対したくないのでここに来ましたと、みなさんおっしゃいます。
あまり決めつけすぎても、今回の新型コロナのように人生何が起こるかわかりません。余裕を持ちながら考えていきましょうとアドバイスをします。
プチ終活のすすめ
そんな若い方がすでに定年後のことを考えていらっしゃるのですね。準備するには早すぎませんか?
(辻本)
やはり40代初めくらいから、考え始めた方がいいとは思います。お金を積み立て、貯めるという準備でいうと遅いくらいです。
もちろんこの時点で、生涯シングルで生きるという選択を考えてはいらっしゃらないと思いますが、自分の人生がどのように変化し、どのような姿になっていくのかによって、親との関わり方も変わってきます。
とくにシングルの場合、自身の定年後の準備と併走するように、親の面倒をどのように看るのかという大きな課題も抱えることになりますから。
そしていま一番多い相談は、親の持ち家をどうしたらよいかという相談です。
親が亡くなり、その家に自分が住む、住まない、貸すのか、売却するのか、どのタイミングで売却すればいいのかなど。
親が急に病院に入院したり、介護になったり、亡くなったりすると、心の準備ができていない子どもはパニックになってしまいますから。親にその準備を促すことも必要ですね。
ただこれは、自分自身にも言えることで、子どもがいる、いないに関わらず、やはり年齢を重ねるごとに身の回りを整理していくことは、必然となってきます。
30代、40代頃から定年後を意識したお金の貯蓄計画を立て、50代に入ればプチ終活を意識した身の回りの整理をスタートしつつ、同時に親の身の回りの整理のサポートも始じめるということですね。
(辻本)
はい、一気に終活をはじめるより、慣らし運転ではありませんが、10年後の60歳を目指して考えも整理しつつ、第二の人生を組み立てていくのがいいのではないでしょうか。
―つづくー
辻本由香(つじもとゆか) つじもとFP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)・相続手続きウンセラー・キャリアカウンセラー(CDA)・証券外務員1種・第2種衛生管理・両立支援コーディネーター・CNJがんナビゲーター
兵庫県神戸市出身、奈良県奈良市在住
コメント